イベントレポート
トークセッション
子宮頸がん啓発キャンペーン「未来への約束」vol.5
輝く未来をかなえたい…そんな女性のためのトークセッションが
7月6日に富山第一ホテルで開催されました。
さまざまな視点から語られた、キレイと健康へのメッセージ。
そのエッセンスをお届けします。
吉本裕子さん
吉本レディースクリニック院長
松本陽子さん
NPO法人愛媛がんサポートおれんじの会理事長
権藤延久さん
ファルコバイオシステムズ執行役員・医師・学術顧問
バイオ事業推進部長
黒田尚子さん
ファイナンシャルプランナー(富山市出身)
田島悠 紀子さん
フリーアナウンサー
若い女性に急増するがん
田島 今日は女性の健康についてお話しを伺います。まずは吉本先生、最近話題になることが多い「子宮頸がん」はどんな病気ですか。
吉本 子宮には赤ちゃんが育つ子宮体部があり、膣(ちつ)へつながる出口を子宮頸部(けいぶ)といいます。この頸部にできるのが子宮頸がんで、最近20代から30代に急増しています。原因はヒトパピローマウイルス(HPV)で、性体験のある女性の約80%が一度は感染するといわれています。初期の子宮頸がんは、頸部と膣の一部を円すい形に切除する「円すい切除術」で子宮を温存して治療できます。がんが進行すると、子宮を取る「単純子宮全摘出」、さらに子宮と周りの組織なども取る「広汎子宮全摘出」を行います。
田島 女性としては子宮を残して治療したいですね。
吉本 そのためにも検診が大切です。20歳になると市町村から、がん検診の受診券が届きますが、最近は性交を経験する年齢が若くなっています。年齢に関わらず、パートナーができたら、1年に1度は検診を受けてください。
田島 治療後の後遺症はありますか。
吉本 広汎子宮全摘出の場合、リンパ節を切除すると足が象のようにむくむリンパ浮腫(ふしゅ)や排尿障害が起きます。放射線治療によって、腸などにも障害が起きることがあります。
田島 厚生労働省が、子宮頸がんワクチンの接種を積極的に勧めることを控えるよう自治体に通達しましたが…。
吉本 HPVの感染を防ぐワクチンは、2009年に日本で認可されました。まれに重い副反応が報告されており、現在、国が調査中です。
松本 副反応の報道を見ると心が痛いです。私たちは正しい情報を得る努力をして、冷静さを保つことが大切だと思います。
田島 松本さんは子宮頸がんの経験から、予防と検診の大切さを訴えていらっしゃいますね。
松本 私は33歳で子宮頸がんが見つかり、子宮を全摘出しました。入院した時、初期の子宮頸がんの女性に会いましたが、彼女は円すい切除で治療してほどなく退院しました。私は5か月入院して、3年間抗がん剤治療を続けました。検診を受けていた彼女と、受けていなかった私で、こんなに差があることを知ってください。私は今も体調が悪いと再発や死への恐怖を感じ、そして子どもを産めない痛みが消えることはありません。
検診が早期発見のカギ
田島 これまでのお話から検診の重要さがわかります。権藤さん、子宮頸がん検診ではどのような検査をするのですか。
権藤 子宮頸部の細胞をブラシのようなものでちょっとこすり取り顕微鏡で調べます。細胞ががんになる前の「異形成」から検査でわかりますので、早期発見に非常に役立ちます。最近はHPV検査を同時に行い、HPVに感染しているかどうかを調べることもできます。
吉本 検診を受けたことがない人は、内診に不安を感じると思います。でも細胞を取るのは一瞬のことです。1年に1回の、一瞬のことですから、ぜひ検診を受けてください。
田島 乳がん検診についても教えてください。
権藤 子宮頸がんになる女性は年間約1万人程度、乳がんは約6万人です。40代に多く発症しますので、40歳から2年に1回のマンモグラフィ検査が推奨されています。ご家族に乳がんになった方がいる場合、発症リスクは2倍から4倍で、発症年齢が早いとも言われます。そういった方は30代からの検診をおすすめします。若い世代や、乳腺が発達している方は、超音波(エコー)検査でもよいと思います。
田島 黒田さんは乳がんを経験されたのですね。
黒田 40歳の時に乳がんが見つかり、右乳房を全摘しました。実はしこりに気づいていましたが、娘を母乳で育てたので、自分は乳がんになりにくいはず…などと思い込んで、病院に行きませんでした。何か変だと思ったら、やはり早く受診することが大事です。
がんにかかるお金の備え
田島 がん治療にはお金がかかるというイメージがあります。黒田さん、ファイナンシャルプランナーとしてお金の備えについて教えてください。
黒田 がんとお金について考えるときのポイントは3つです。1つは「がん治療費はケースバイケース」。がんは部位や進行度で治療費が大きく異なります。進行すると体や心の負担とともに、お金の負担も重くなります。2つめは「がん治療は入院から通院へ」ということ。今やがん患者の半数以上が通院治療しています。以前のがん保険には、通院保障がない場合がありますので確認しておきましょう。3つめは「手術をした後に大変なのががん」です。手術後も、リンパ浮腫をケアする弾性ストッキングや弾性スリーブ、交通費や健康食品、サプリなど、QOL(生活の質)の向上にさまざまな費用がかかります。
田島 治療費以外にもお金がかかりますね…。保険商品を選ぶポイントはありますか。
黒田 がんになったときの経済的な備えのベースは公的保障です。会社員の方は健康保険、自営業であれば国民健康保険と、みなさん公的保険に入っています。治療費が高額になった時は、一定額以上の負担が戻る「高額療養費制度」が利用できます。まずは自分が受けられる公的保障を把握しましょう。民間の医療保険やがん保険は、喫煙や飲酒など生活習慣や、家庭での立場などによって、一人ひとり必要な保障は異なります。保険料で保険を比較しがちですが、自分に合った保険か、自分はどんな保障が必要かを考えて保険を選んでください。また保険と併せて預貯金などで、バランスよく備えましょう。
体の内側からメンテナンス
田島 子宮頸がんについて、検診の大切さについて、いろいろな面からお話を伺いましたが、最後にみなさんからひと言ずつお願いします。
権藤 子宮頸がんって怖いな…といった漠然とした不安をそのままにせず、ちゃんとした心配に変えて、さらに行動に変えましょう。ぜひ毎年継続して検診を受けてください。
黒田 検診も、保険も、つい後回しにしがちですが、できることはしっかりと備えて、後はがんのことなんて忘れて暮らす…そんなふうに心がけてはいかがでしょう。
吉本 女性たちにとって敷居が低く、いつでも気軽に受診できるように…と思い8年前に開業しました。検診はもちろん、体の不調や心配事など気軽に受診してご相談ください。
松本 みなさん、お肌のお手入れにかけるエネルギーの10分の1でよいので、体の内側のメンテナンスにもかけてください。そして何でも相談できる、かかりつけの婦人科を持ってください。みなさんが体の内側からハッピーで、輝く女性になっていただきたいと心から願っています。