キャンペーン

イベントレポート

トークセッション

平成24年7月14日 未来への約束 トークセッション

子宮頸がん啓発キャンペーン 「未来への約束」vol.4

子宮頸がんは、ワクチン接種と検診で予防できるがんです。
健康な体と未来を守るために、正しい知識を持ってほしいと、
7月14日に富山市でトークセッションが開催されました。
子宮頸がんの経験者、医師、お金の専門家も交えて
さまざまな角度から繰り広げられたトークに、
多くの女性たち、また男性参加者も耳を傾けました。

種部 恭子さん (たねべ・きょうこ)
種部 恭子さん
(たねべ・きょうこ)

女性クリニックWe富山院長
1990年富山医科薬科大学医学部卒業。医学博士。産婦人科医。2006年7月より現職。

河村 裕美さん (かわむら・ひろみ)
河村 裕美さん
(かわむら・ひろみ)

静岡県職員。社会福祉士。1999年、子宮頸がんの告知を受け、治療。2002年に自助グループ「オレンジティ」を結成。理事長を務める。

黒田 尚子さん (くろだ・なおこ)
黒田 尚子さん
(くろだ・なおこ)

立命館大学法学部卒業後、大手シンクタンクにSEとして勤務。在職中にFP資格を取得後独立。NPO法人CNJ認定乳がん体験者コーディネーター。富山市出身。

コーディネーター  山本 舞衣子さん
コーディネーター
山本 舞衣子さん

元・日本テレビアナウンサー。「ズームイン!!SUPER」「Oha!4」などを担当。2011年5月からフリーで活動し、現在はTBS「はなまるマーケット」などに出演中。看護師・保健師の資格を生かし、医療・健康分野の取材などに積極的に取り組む。

20代に急増 ワクチンで約7割予防

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山本 種部先生、子宮のがんにはどんなものがあるのでしょうか。

種部 子宮は赤ちゃんを育てる臓器です。赤ちゃんが入るところは子宮体部。子宮の出口にあたるのが子宮頸部です。子宮体部にできる子宮体がんは、50歳以上に多く発症しています。頸部にできる子宮頸がんの発症が一番多いのは35~40歳。今は20代にも急増しています。

山本 全国でどれくらいの方が子宮頸がんにかかっているのでしょうか。

種部 1年間に約1万人が発症し、その中で亡くなる方が3500人くらいです。20~30代の発症率は10年前、5000人に1人でしたが、今では2500人に1人と、倍増しています。初期には自覚症状がなく、症状が現れるころにはすでにかなり進行しています。自覚症状がないからこそ検診が大切なのです。

山本 子宮頸がんの原因は何なのでしょうか。

種部 HPVの感染が原因です。性行為によって女性の8割が一生に一度は感染しますから、誰にでも起こりうる病気です。感染してもほとんどの人はウイルスが体内から自然に排除されますが、一部の人ではウイルスが排除されず、感染が長期間続くと、子宮頸部の細胞ががん化します。HPVの中で特にハイリスクなのは16型・18型で、この2つでがんになる人の割合が若い人だと60~70%くらいになります。

山本 予防ワクチンについて教えてください。

種部 ワクチン接種によって特にハイリスクな16型・18型のHPVへの感染を防ぐことができます。これにより子宮頸がんの約7割が予防できます。1回でも性体験があると感染している場合があるので、ワクチン接種は性体験前が効果的です。高校を卒業するまでに40%が性体験を持つとされていますから、中学1年、12歳のワクチン接種は決して早くありません。自費でワクチンを接種すると5万円くらいかかりますが、県内の市町村では中学1年から高校1年までを対象に接種費用が全額助成されています。

最も大きな後遺症は 子どもが産めないこと

山本 河村さんはご自身の経験から予防と検診の大切さを訴えていらっしゃいますね。

河村 私は子宮頸がんになり、広汎子宮全摘出手術で子宮、卵巣、リンパ節を取り除きました。医師から子宮頸がんを告げられたのは、1999年7月、32歳のときです。結婚して1週間後のことでした。たまたま病院に行ったときにみつかりました。夫はその時、「がんは治る時代だから、大丈夫」と言ってくれました。ただ、母に電話すると「離婚しなさい」の言葉。先のわからない人生に夫を付き合わせるわけにはいかないと、私も離婚を決意しました。
手術を受けるまで、卵子の凍結ができないかなど悩みました。女性にとって子宮を摘出することはとても大きなこと。子どもが産めなくなってしまうことはつらくて悲しいことです。でも夫の「一緒に生きていこう。子どもがいない夫婦は大勢いるのだから」の言葉で救われました。手術後2カ月で仕事に復帰しました。静岡県空港利用政策課に勤めながら、2002年に「オレンジティ」という自助グループを設立し活動しています。静岡県の名産「みかん」と「お茶」が名前の由来です。

山本 子宮頸がんの後遺症はあるのでしょうか。

河村 まず、子どもが産めなくなったことです。そのほかにも排尿・排便障害があります。トイレに行きたいという感覚がなく、自分で時間を見計らって排泄します。冬場、膀胱炎を繰り返したこともありました。最近は上手に付き合えるようになってきて、尿取りパットを使ったりしています。卵巣を切除したことから女性ホルモンの分泌がなくなり、32歳で更年期障害も現れました。今も女性ホルモン剤を飲んで補充しています。リンパ浮腫で左足がむくんで太くなります。毎日マッサージをして、専用のストッキングをはいていますが、1枚1万9980円と高額です。それに性交渉の問題もありますね。手術で膣を短く切ってしまうので、今までどおりの性交渉ができなくなります。

種部 手術では、子宮、卵巣を取り除くだけでなく、周囲にある神経も切除することになりますから、排尿・排便障害とは生涯付き合うことになります。リンパ節を切除すると、水を心臓に戻すパイプがなくなった状態ですから足に水がたまります。術後はマッサージやケアが必要です。性交渉のことについては、医師には相談しにくいですね。

河村 母にも友人にも相談できません。子宮頸がんは20~30代に多い病気です。結婚前、好きな男性にこういう体だといつ打ち明けたらいいのか悩む人も多く、先輩として役に立ちたい、病気や後遺症のことを話し合えないかと、「オレンジティ」を立ち上げたのです。09年には、社団法人「ティール&ホワイトプロジェクト」を設立し、子宮頸がんの啓発活動を行っています。

種部 子どもを産むか産まないか、性交渉ができるかどうかで女性の価値が決まることはないと思います。女性はそのためにいるのでは決してなく、夫婦寄り添って人生を豊かにするというのが本当の姿。でも周囲から「子どもが産めない」と言われた時のショックは大きいですね。

河村 母に「離婚しなさい」と言わせてしまった自分がつらかったですね。母も夫もつらかったと思います。

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セカンドオピニオンで 納得した治療を

山本 黒田さんもがんを経験していらっしゃいますね。

黒田 2009年12月に乳がんの告知を受けました。右乳房に2つ腫瘍があり、乳房を全摘しなくてはいけないということでした。自覚症状がまったくなく、信じられなかったので、セカンドオピニオンを受けました。セカンドオピニオンは、よい医療を選択するために第三者の医療機関を受診し、医師に意見を聞くことですが、診断はもちろん、乳がんとはどんな病気で、日本でどういった治療がなされているか、第三者の医師の意見を客観的に聞けたことがとても良かったと思います。

山本 私は最初の病院でがんと診断され、別の病院に行く勇気がなかったんです。浮気したように思われるのもいやだなと。そのあたりはどうですか。

種部 セカンドオピニオンを受けたいと言ったときに、快く紹介状を書いてくださる先生は信頼できる先生です。診断に自信があるし、患者さんのことを親身になって思ってくれています。紹介状をお願いすると「じゃもう来なくていいから」と言う先生はあまり感心しません。その先生と相性が合うか、安心して納得して治療が受けられるか、顔を見て話してくれるかどうかがポイントです。

もしものがんに 備えておきたい医療保険

山本 がん治療にはお金が掛かります。黒田さんには、ファイナンシャルプランナーの視点からお話いただけませんか。

黒田 がん経験者に年間どれくらいの費用が掛かったかを調査したデータによると、平均115万円。がんの進行度によってその額も異なりますが、一つの目安です。また、治療以外にもいろんなお金が掛かります。たとえば、東京など県外の病院で治療という方は当然、交通費や宿泊費が必要です。ご主人や家族が付き添う場合はその分の費用も掛かります。がんは、手術が最初のスタートで、治療期間が非常に長い病気です。食べ物に気を遣い、健康食品やサプリメント、漢方薬を利用される方も多いです。このほかウィッグ。女性の場合、髪の毛が抜けるというのは大きな問題です。私もそうでしたが、抗がん剤治療を受ける前には、まずかつらを買ってくださいと言われるでしょう。

河村 私は熱海から東京に通院したのですが、新幹線やタクシー代がかなり掛かりました。今でもストッキングや尿取りパットなどケアをするためのものにお金がどんどん出ていきます。生涯続いていくのかと思うと、不安でたまりません。就職した時に親に勧められて入った保険は、病気になって本当にありがたかったですね。

山本 がん保険はどういう選び方がいいのですか。

黒田 民間保険会社のリサーチでは、がん患者が選ぶ保険として、入院しなくても保険金や通院費が受け取れるタイプのもの。がんと診断されたら以降の保険料が無料といったものなどが挙げられています。さらに最近では医療の発達によって、がんの手術といっても入院日数が短くなってきています。昔に契約した保険の保障内容が、今の医療にマッチしているかどうか見直すことも必要です。

産婦人科を身近に 職場でも取り組み必要

山本 子宮頸がんは検診が重要で、アメリカでは80%くらいの人が検査を受けていると聞きますが。

種部 日本では、産婦人科に行くことに抵抗感がある人が多いようです。初めて受診したのが妊娠した時という人がほとんど。子宮頸がんの検診を最も受けてほしい年代は20代ですが、現状は5%くらいの受検率です。彼女たちは自分が子宮頸がん検診の対象だと思っていないのです。子宮頸がんの無料クーポン検診が始まり、20代の検診率がようやく増えてきましたが、クーポンは5年に1回しか送られてきません。年1回の検診をお勧めします。若い人たちの多くは働いていますから、検診のチャンスを作らなければならないのは職場です。職域検診で子宮がん検診を受けられるシステムがない場合は、作ってもらえるよう働きかけてください。日本の現状では自分の努力で検診の機会を見つけるしかないので、若い人の検診の機会を増やすように職場でも勧めてほしいと思います。

黒田 検診はとても大切です。がん検診によって早期発見すれば体への負担が軽い。しかも、がんの種類や進行度によってどういう抗がん剤を使うかなど、治療費も違ってきます。早期だとお金もそれほど掛からないということを知っていただきたいですね。

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河村 私は子どもが好きで自分もいつか親になることを夢見てきました。両親に孫を抱かせたいと思いましたが、それを叶えることはできませんでした。「肉体的な母親」にはなれませんが、みなさんが私の話を聞いて、子宮頸がんについて考えるきっかけになれば、そのことによって「社会的な母親」にはなれると思います。オレンジティは、静岡、東京、今年から千葉、神戸で活動しています。富山でも出張おしゃべりルームを始めました。病気になったとき、患者さん同士で支え合うというのはとても大きな意味があります。体験を話すことで他の患者さんも将来や未来が見えてきます。今後も活動を広げていきたいと思います。

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