子宮頸がんについて
苦しむ女性たちを医療の現場で見てきたからこそ、検診の大切さを伝えたい。
今回は、がんと向き合う患者を専門的な知識で支える「乳がん看護認定看護師」に注目しました。
患者の心身に寄り添う、その取り組みや思いを通して、女性なら誰もがかかる可能性のあるがんについて、また自分の健康について、あらためて考えてみませんか。

富山県立中央病院
乳がん看護認定看護師
酒井裕美さん
患者の思いに寄り添うために
全国で毎年5万人以上が新たに発症し、約1万2000人が亡くなっている乳がん。女性が人生で最も充実し、多忙な時期でもある30代後半から40代が発症のピークで、患者や家族には重い負担や不安がのしかかります。そんな乳がん患者を専門的な知識や技術で支えるのが「乳がん看護認定看護師」です。酒井裕美さんは制度が始まった2006年、半年にわたる教育カリキュラムと試験、認定審査を経て、県内で最初の乳がん看護認定看護師となりました。
乳がん患者は手術翌日には歩行でき、身の回りのことも自分でできます。「一見“手のかからない患者さん”なのです」と酒井さん。「ある夜、患者さんが泣いているのに気づいて声をかけると、乳がんの手術後に初めてシャワーをし、自分の胸の傷を見て泣けてきたと…。そのとき患者さんの思いに寄り添うという、看護の基本を忘れていたと気づかされました」。また最新の医療情報を誰もが得られる時代になり、患者の知識が豊富になるなかで、乳がん治療や乳がん看護について、より専門的に学びたいと認定看護師を目指したのでした。
がんと向き合う心と体を支える
乳がんには4つのタイプがあり、治療方法もいろいろで、しかも日々進化しています。患者の多くは、医師から説明を受けただけでは、わからないことばかり。治療の目的や方法を理解し、納得した上で治療を受けられるよう、酒井さんはわかりやすくかみ砕いて説明を加え、患者の疑問や不安を解いていきます。
また乳がんは退院後も通院で長く治療するケースが多く、患者によっては抗がん剤などによって起きる体の変化と直面しながら治療を続けなくてはなりません。酒井さんは患者がその時々の自分の状況を受け入れられるよう、カウンセリングを通して心理的にケアするとともに、乳房の変形や喪失、脱毛や爪の変色などに対しては、下着やウイッグを含め具体的な情報提供やアドバイスを行います。手術後に多くの患者が悩むリンパ浮腫にも、専門的知識を生かして予防やセルフケアをサポートします。2007年に立ち上げた乳がん患者会・スマイルリボンでも、さまざまな相談に応え続けてきました。
看護専門外来を開設した昨年度、酒井さんが対応したカウンセリングは500件以上。いかに多くのがん患者が、専門的知識に裏付けられた心身の支えを求めているかがわかります。
県内どこでもより良いケアを

乳がん患者を支える一方で、患者を支える看護師もサポートしていこうと、酒井さんは病院の枠を超えて県内の看護師たちと連携し、2007年に「TOYAMA・BCN(ブレストケアナース)サポートチーム」を始動させました。看護師のレベルアップをめざし、医師の協力も得ながら研修やセミナーなどを開催。富山県内のどの病院を受診されても、患者がより良いケアを受けられるよう、乳がん看護認定看護師(現在県内に5名)を中心に15名程度のメンバーが活動を続けています。
もうひとつ力を注いでいるのが、乳がん検診や早期発見・早期治療の啓発活動です。「医療の現場で、乳がんに苦しむ患者さんを数多く見てきたからこそ、検診の大切さを訴えたい」という酒井さん。「乳がん治療は選択肢が増え、進歩していますが、薬代や治療費は高額になります。早期発見できれば、かかるお金も違ってきます。そして何より乳房を失う女性を減らせます」。
酒井さんが毎年協力している県のピンクリボンキャンペーンの一環で、今月は県庁前公園などがピンク色にライトアップされます。そのやさしい光に託された思いを受け止めて、私たち一人ひとりが、がん検診の大切さを心に刻みたいものです。