産婦人科医からのメッセージ
産婦人科医 南 里恵 先生


富山県立中央病院
産婦人科
南 里恵 先生
女性の多くが「HPV」に感染します。
子宮には、赤ちゃんが育ち、生理をつくる「体部」と、その出口である「頸部」があります。 子宮頸がんは、性交渉によって子宮の頸部にHPV(ヒトパピローマウイルス)が感染することで起きます。HPVは私たちの身の回りのどこにでもいるイボの原因ウイルスです。現在100種類以上の「型」が知られており、約40種類が性器や粘膜に感染します。そのうち子宮頸がん発症に深くかかわる15種類がハイリスクHPVとして特定され、中でも進行子宮頸がんでは16型・18型による感染が多く認められます。
80%以上の女性が性生活を営む中でHPVに感染しますが、免疫が働いてほとんどの方は治ります。しかしごく一部の人はウイルスが消えず感染が持続し、約5〜10年でがんになるといわれています。
もちろん男性もHPVに感染しますが、女性に比べてがん発症の頻度が非常に低く、健康に影響することはまれです。
がんになる前に防げる、見つかるがんです。
子宮頸がんは発症するまでに時間があり、定期的に検診を受けることで、がんになる前に細胞の異変を見つけて治療できます。1~2年に1度、細胞診検査を受ければ予防できるのです。細胞診に加えてHPV検査を受け、自分がハイリスクHPV感染者かどうか知ることも可能です。
性体験前にできることは、HPV感染を予防するワクチン接種です。免疫が活発な10代前半ほどワクチンは効果的といわれていますが、それ以降でも感染予防効果はあります。ただしワクチンで防げるのは、16型・18型のみで約7割程度です。ワクチンで防ぎきれない感染をカバーするためにも、セクシャルデビュー後は検診を怠らずに受けてください。
正しい知識をもって自分を守ってください。
予防できる子宮頸がんも、進行してしまえば妊娠・出産の可能性を失い、思い描いた人生設計をかなえられないことになります。進行度により子宮摘出手術が広範になれば、さまざまな後遺症に苦しむことにもなります。まして20代・30代で命を落とすなんてやりきれません。
パートナーと将来どう付き合っていくのか、子どもはいつ、何人産みたいのか、仕事はどうするか。自分の女性としてのライフスケジュールを考え、パートナーや家族のことを思えば、検診は?ワクチンは?そもそも性行為は?…責任を持ってどう行動するべきか見えてきます。正しい知識を武器に、自分の体は自分自身で守りましょう。パートナーや家族との信頼を保ちながら、女性たち一人ひとりが子宮頸がんを正しく知り、当たり前のように予防する社会になることを願っています。